君が大好きなお菓子を持って、今日も足早に君の部屋に向かう

あの人に気付かれないように気配を殺すのは忘れない

入りまーす」

そう言って、相手の返事を待つことなく部屋に入る

「あれ、フランどーしたの?」

とお菓子食べようと思って持ってきましたー」

「わーい!食べる食べる!」

ミーの大好きな笑顔で部屋に招き入れてくれる

「では、一緒に食べますー」

「えっと…牛乳で良い?」

「ありがとうございますー」

「いえいえ」


あー、アイツがこんな可愛い笑顔を独り占めなんて最低ですよー

ミーの方が絶対のこと好きだし、幸せに出来ますー







「…最近どうなんですか?」

「何が?」

「ベルセンパイとよろしくしてるんですかー?」

「ぶっ…」

の吹き出した牛乳がミーの洋服に付着してシミになりましたー

まあ、構わないんですけどー



「い、いきなり何言ってんの?」

「興味本位ですよー」

こんなに的確な返答は他に無い

ジャッポーネには便利な言葉があると心の中で少しだけ関心



「どーなんですかー?」

「まあ、普通だと思いますー」

ミーの口調を真似しながら曖昧な返事をする

まあ、照れ臭そうな表情をしている時点で、その曖昧具合は無駄になってるんですけどね















「………」


「うわ、フラン!?」


やっぱりムカついたから子供の特権を使ってに抱き付いてみましたー


「…何かあったの?」

優しく頭を撫でてくれるが愛しくて腕に力を込める

「…別に」

「そっかー」

それ以上は何も聞かない話さない

やっぱりあの人には勿体無い
















「でっ!!」


「フラン!?」



背中に僅かな違和感を覚えて振り返れば、そこに居たのは…







「…ベ、ル」







「…何してんの?」





「アンタこそ人を踏み台にして何してるんですかー」







「オレが出掛けてる間に何してたか聞いてるんだけど?」


に近付いた堕王子はミーの存在を無視して話を進める



「フランと話してた…だけ」

俯いて怯えているを堕王子は冷めた目で見下ろす

こいつ完全に目がイっちゃってますよ実際は見えてないんですけど





「話してるだけなのに抱き付く必要あるの?」


「…そ、それは」


「抱き付いたのはミーでは」


「…サイアク」





そう言い放って部屋から立ち去る堕王子


本当に歪みの塊みたいな奴ですね


取り残されたミーとの間に重苦しい沈黙が流れる



「………」

「行かなくて良いんですかー?」

「…良くないけど」

「部屋ならミーが片付けるし適当な理由で2人とも生存不明にしておきますよー?」

「…流石に殺されたりはしないよ」


苦笑を浮かべて顔を上げる


何であんな奴が良いんですかね


理解したくないし出来ませんけど





「…フラン」

「何ですか?」

「ごめんね」

「………」



ゆっくりと立ち上がり、アイツの部屋に向かうを無言で見送って残ったお菓子の片付けを始める







「あーもうムカつく」



何であんな奴に取られなくちゃいけないんですかねー

テーブルに残った牛乳を一気に飲み干して、勢い任せに寝転がる



「…幸せになる資格なんて、無いかもしれないですねー」











君の為に僕が不幸になるのか










僕の為に君が不幸になるのか















(神様とやらは残酷だ)