「ずるいと思うんだ」

「何が?」

ムスッとした顔で、不貞腐れながら唐突に話し始める

いきなりそんなこと言われても王子意味分かんないんだけど…

「私のこと嫌い?」

「大好き」

「…だからずるい」

また不貞腐れて、外方を向く

「意味分かんないんだけど」

「…ヴァリアー好き?」

「は?」

「ボスはスクはルッスはレヴィはマーモンはモスカは好き?」

身を乗り出してオレに尋問する

あ、この位置ならキス出来るかも…

今したら怒りそうだから我慢するけど

「どーしたの?」

「昨日の殺し屋は一昨日の任務で処分した偉そうな人は先週来た新聞配達の男の人は好き?」

「ちょっと落ち着きなよ…」

とりあえずの頭を撫でて落ち着かせようと試みる





「…ご、ごめん」

「大丈夫?」

「うん」

「何か変だよ?」

「……」

黙り込んで俯く

その状態にも関わらず、オレの服の袖をしっかり掴んでるから、思わず頬が緩みそうになる





「王子に言えないこと?」

「…」

無言で首を左右に振る

「じゃあ、教えて?」

「…」



「…ずるい」

「ん?」

「羨ましいの」

断片的だけど、少しずつ吐き出し始めるの言葉を聞き逃さないように、注意しながら話を進めるように促す

「ベルは私のこと嫌いになる?」

「無理」

「レヴィは?」

「…嫌いに決まってるじゃん」

あんなの好きになる奴の気が知れない



ボスボス言ってるし気持ち悪いし変態だし

良いとこ挙げる方が難しい鈍重野郎だもん



「ボスはスクはルッスはマーモンは…」

「それじゃあ、さっきと変らないじゃん」

また質問攻めにされるのは嫌だから途中で中断させる

「じゃあ、レヴィだけで良い」

「それで?」

あんな奴中心で話を進めるのは納得いかなかったけど、これ以上混乱するのも嫌だから仕方ない

レヴィなら後で殴りに行けば良いし



「私のことは嫌いじゃなくてレヴィのことは嫌いでしょ?」

「うん」

「だからレヴィが羨ましいの」

あんな奴が羨ましいなんて、頭打ったのかな…

「よく分かんないんだけど」

「だから、レヴィの嫌いが羨ましい…みたいな?」

そんな可愛く首傾げながら聞かれても、分からないことだらけなんだけど…

「もっと分かりやすく言ってくれないと分かんない」

「はいはい」

「早く教えてよ」

今度はオレが不貞腐れて外方を向く

形勢逆転の状態に満足したのかは胸を張って、だけど少し気恥ずかしそうに説明を始めた

「私のことは好きって言ってくれるでしょ?」

「だって好きだもん」

「レヴィのことは嫌いって言うでしょ?」

「嫌いだからね」

「私はベルの好きは貰えても嫌いは貰えないでしょ?」

「うん」

「そーゆうことだよ」

えへへーなんて言いながら擦り寄ってきた

言いたい事を理解した途端に、その様子が異様に愛しくなって倒れ込むの覚悟で思い切り抱き付いた

勿論、が頭を打たないようにオレの右手が下敷きになるような状態

右手の痛みなんか気にならないくらい、愛しくて堪らなかった





「つまりはワガママなんだね」

「ベルの全部じゃないと満足出来ないだけ」

「うししっ、今日は素直じゃん」

「悪くないでしょ」

そう言ってオレの胸に顔を埋める姿が可愛くて、無言で腕の中に閉じ込めた











1番も2番も3番も

全部欲しくて堪らない









(君だけじゃなくちゃ嫌だ)