「マーモン好きー」
「ムギャ!」
「マーモンは本当に可愛いねー」
自分が暗殺部隊の隊員なのを忘れて加減しないで僕を抱き締める
「…、苦しいんだけど」
「あ、ごめんごめん」
ようやく解放されて深い溜息を吐けば、隣から先程と同じ台詞が聞こえてくる
「…」
「何?」
「あんまり可愛いって言わないでくれないかな?」
「だって可愛いんだもん」
…言うだけ無駄だったね
「が良くても僕が良くない」
「可愛いって良いことだよ?」
僕が可愛いって言われるのを嫌がる本当の理由を君は知らない
恥ずかしいとか、男だからとか、そんな簡単な理由じゃないんだ
「次言ったら遊んであげないよ」
「えー!それは困る!!」
「じゃあ、止めてよね」
「うえー」
そんな風に明らかに拗ねた素振りを見せても無駄
僕だって長生きしたいからね…
「見つけた」
「うわっ、ベルに見つかった!」
「何その失礼な言い方」
「気のせいだと思う…よ?」
「…それより、ルッスーリアが探してたけど摘み食いでもしたの?」
「してない!」
「ふーん」
「何かな…」
「行ってみれば?」
「うん、行ってくるー」
そう言い残しては部屋からスタスタ出て行った
「…なあ、マーモン」
「何だい?」
「…と何話してた?」
明らかに先程とは違う態度で僕に問い掛けるベル
この血を流した時以上に厄介な二重人格どうにかならないかな…
「盗み聞きしてた奴が言う台詞じゃないと思うけど」
「ふーん、気付いてたんだ…って当り前か」
「あれだけ殺気放ってればも気付いてたんじゃない?」
「それは無いよ」
ベルが否定するんだからは本当に気付いてなかったんだろうね
のことなら何でもお見通し…か
「で、分かってると思うけど…」
「ムギャ!!」
…油断した僕が悪かった
気付いた時には、ベルのナイフが僕の頬を掠めていた
通常の任務時に感じる殺気以上の気配に思わず背筋が凍り付く
「はオレのだからね?」
「…分かってるよ」
「早くのこと嫌いになれよ」
「独占欲もその域まで達すると立派なものだね」
「褒め言葉として受け取っておくよ」
ひらひら手を振りながら部屋を立ち去るベル
先刻の騒がしさが嘘のように静まり返る部屋に取り残された
一人になった瞬間に頬の痛みが増したような気がした
「フン…」
確かにを好きなのは事実
本人は全く気付いてないどころか、僕のことをマスコット扱い
その位置ではベルに勝ってると思うけど…
「ベルは知らないと思うけど、は君の話をする時、本当に嬉しそうに笑うんだよ」
の世界は君が中心で
君の世界はが中心で
そんなが、好きなんだ
君と居る時のが好きだなんて
悔しいから教えてあげないけど
(君達の幸せが僕の幸せ)