「そんなの私の知ってるジルじゃない」
怯えた顔でオレを見上げるを見ると、不思議と笑いが止まらなかった
「10年以上会ってないんだから当たり前だろ?」
目の前に居る君もオレの知ってるじゃない
まあ、新しい部分を見れるのも新鮮で楽しい
「だ、だからって何でいきなり部屋に来るの?」
「んー…悪者に誘拐されたお姫様を迎えに?」
「…確実にジルの方が悪者だと思います」
…オレの面子が丸潰れなんだけど
苛立ちを覚えて、少し乱暴に腕を掴んでを引き寄せる
「うわわっ!」
「から抱き付いて来るなんて積極的」
そんなことを言えば顔を真っ赤にして俯く
何か、昔より可愛いかもしれない
「なあ、ベルに何かされてんの?」
「は!?なっ…なななに言って…な!?」
取り乱して何言ってるのか全然分かんないんだけど、焦り過ぎ
「アイツ殺したらオレと一緒に来るの?」
「やだ」
「じゃあ、殺さないからオレと来る?」
「…やだ」
ワガママばっかり言いやがって超絶生意気
「そんな生意気なのオレの知ってるじゃない」
その言葉に驚いたような顔をして、オレを見上げてくる
「さっきのお返し」
「最悪だ!意地悪だ!」
今度は悔しそうな顔をして、オレを睨み付けてくる
本当に面白いくらい表情がコロコロ変わるなぁ…
「じゃあ、オレと一緒に来る気は無いってこと?」
「ジルがヴァリアー来れば良いじゃん」
「…考えとくよ」
絶対に無理だと思うけどね、白蘭様に消されたくないし
の傍に居たいけど、生き延びたいっていうのも本音
…でも、あの人なら簡単に許可してくれそうな気もする
本気で相談してみようかなーとかぼんやり考えてみたり
「さて、帰ろうかな」
「え?もう帰るの?」
少し焦ったような声色でが不安そうに呟く
「ベル帰ってくるんだろ?」
「そうだけど…」
「寂しいんだ?」
「…別に平気だもん」
強がりを言って視線を逸らすの頭を軽く撫でて、部屋から出ようとする
「あ、大事なこと忘れてた」
「ん?」
「お別れのキスしよっか?」
「さっさと帰りやがってください」
「うわ、ノリ悪過ぎ」
そう言い残して部屋の窓から飛び下りた瞬間に大量のナイフが飛んできて、の部屋からは殺気を放つ金色が見えた
「あ、帰ってきやがった…」
やっぱり再開した時に殺しておけば良かったかもしれない
この後、が何されてるかなんて容易に想像つくし
「次会った時に殺してみようかなー」
きっと君は泣き叫んでオレを責めるだろうけど、それで君が手に入るなら簡単だ
(全て投げ出して傍に居るから)