早く進まないと間に合わないから



手遅れになる前に壊してみればいい









「スクアーロ…」

「何だぁ?」

「お願いがあります」


期待しなかったと言えば嘘になる

君がオレを頼ることが嫌なんて感じたことは無かった





「その顔を殴らせてください」





嬉しそうに頼み込むの顔


「ちょ、ちょっと待てぇ!!」

「うっさい。1発で良いから殴られろカス鮫!」


とりあえず逃走を試みるが、奴も本気らしく全力で追い掛けてくる

見慣れない鈍器を振り回すを見れば1発じゃ済まないことくらいオレでも分かる

しかもカス鮫なんて呼びやがった…



「カスがオレをカス呼ばわりするんじゃねぇ!!」

「じゃあカス鮫って言わないから殴らせて!」

「ふざけんなぁ!!!」




















1時間近く逃げ回って、ようやく自分の部屋に避難することに成功した

ベッドに倒れ込んで盛大に溜息を吐けば鍵を閉めた筈の扉が大きな音を立てながら崩れ去った



「ゔお゙ぉい!!!」

「確保!」


顎に思い切りの頭が当たって、オレが座っていたベッドに否応なく倒れ込む


「お前、顎が折れる…」

「馬鹿だから大丈夫だよ」

「そ、それ関係ねぇだろ…」

「ふーん」


痛みと同時に感じる妙な重量感



「お前、太ったか?」

「は?」

「…すいませんでした」


渋々とオレの上から退いて隣に座る

さっきの鈍器が見当たらないことを確認してオレも起き上がる



「で?」

「何が?」

「さっきの鈍器は何だぁ?」

「スクアーロが暇そうだから遊んであげようと思って」

「遊びじゃねぇだろ…」

「だってボスに殴られるの好きでしょ?」

「お前、オレを何だと思ってやがる」

「カス鮫マゾヒスト」



ヘラヘラと悪びれる様子もなく、とんでもないことを言い放つ

どうやら冗談ではないみたいで見事に怒る機会を逃した


しかし奴がオレを気に掛けてくれてることが嬉しくて

それだけで充分だったんだ

流石にマゾヒストは納得がいかなかったけど、弁解するのも面倒だから記憶から末梢することにした



「眠そうだね」

「あれだけ走ったからなぁ…」

「膝貸してあげる」

「…明日は雨だなぁ」

「顎を折りましょうか?」

「ごめんなさい」





近いのか遠いのか微妙な距離感

きっと君は気にしてないと思うけど

もう少しだけ

もう少しで構わないから



君のことが知りたいんだ










早く早くと急げば急ぐほど

空回りを繰り返して曖昧で心地良い関係が続く